世界一の自動車市場を彩る小さな「車」たち

久しぶりの桂林で、以前はなかった横断歩道橋にお目にかかって少しびっくりしたという話を前回に書いたが、もうひとつ、興味を引きつけられたものがある。それは、例えば下の写真にあるような小さな電動の「乗用車」たちだ。日本ではまず見かけない型の車である。
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この3台はいずれも、宿近くの住宅団地の一角に止めてあった。うち2台が4輪車、1台が3輪車。なかなかに個性的な風貌である。日本の「軽」の乗用車よりもひと回りかふた回り小柄だが、中をのぞいてみると、3人や4人は乗れそうだ。モータリゼーション(車の大衆化)の進んだ中国だけど、普通の乗用車にはまだちょっと手が届かない人たちが買っているのだろうか。
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街中の幹線道路に面して、こうした車の販売店が軒を連ねていた。上と下の写真がそこで見かけた車たちである。
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店の人に話を聞いてみた。新品の値段は3輪車で8千~9千元(1元=16~17円)、4輪車で1万2千~3千元。日本円にすると、3輪車が14万円ほど、4輪車が20万円ちょっとだ。1回充電したら、70キロは走れますというのが店の宣伝だった。

中古車もあった。下の写真がそうで、エンブレムはトヨタの高級車レクサスの「L」とそっくりだ。売値は3800元。6万円ほどで、「老年代歩車」とある。「老人の足代わり」といったところだろうか。
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ところで、写真にある乗り物をここまで「乗用車」とか「車」とか呼んできたが、正確な言い方ではなかった。というのは、これらは運転免許が要らないのである。中国には電動バイク(スクーターのようなもの)が多いが、運転免許なしで乗れる。ここまで書いてきた乗り物も電動バイク、もっと言えば、自転車と同じ部類に入るので、運転免許は不要。したがって、ナンバープレートもない。「車もどき」とでも呼んだら、ぴったりなのかもしれない。

運転免許なしで事故は大丈夫? といった心配はあるけれど、それはそれとして、税金なんかは払う必要がない。車検も関係がない。何かと利点がある。ただ「車」ではないのだから、街中ではバスなどが通る「車道」は走れない。自転車と同じように、車道と歩道の間にある「側道」(と呼ぶのだろうか)を走らされている。いくらかの「差別」は我慢しなければならない。

ここまで書いてきた乗り物と同じように、小さくて可愛いのだが、運転免許が必要なのが下の写真の車である。桂林が属する広西チワン族自治区にある自動車メーカーの製品で、今これがこの地の若い女性の間で大人気だそうだ。
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とりわけ、幼子を横に乗せて走るのが「かっこいい」と、若いお母さんの憧れの的とか。3歳の女の子がいる桂林在住の教え子の女性も、これが欲しくてたまらない。夫も買ってやると言っている。ただ、運転免許がないので、これに乗るためだけに、教習所に通い始めたそうだ。「女性専用車」と呼んでもいいのかもしれない。

中国は世界一の自動車市場である。それも、日本だと、走っているのはほとんどが国産車だが、中国ではまさにあらゆる国の車が走っている。

中国独自のブランドに加えて、日本の乗用車だと、トヨタニッサン、ホンダ、スズキ、マツダダイハツ、ミツビシ、スバルと、全メーカーのものがそろっている。ドイツ、アメリカ、フランス、イギリス、イタリア、スウェーデン、韓国・・・の車も頻繁に見かける。なかでも、日本が二の足を踏んでいるのを横目に、いち早く中国に進出したドイツは日本を凌駕し、道路はフォルクスワーゲンだらけである。

そんな中国の自動車市場に、小柄ながら個性的な「車もどき」や「女性専用車」が彩りを添えている。