付き合いにくくなった(!?)中国

1か月前、「日中の郵便局に翻弄された50日間」というのを書いた。日本から中国に食料品や薬をEMS(国際スピード郵便)で送ったところ、中身の価格が1,000元(16,000~17,000円)を超えていることや、食料品と薬が一緒に詰められていることを理由に、送り先には届けてもらえず、結局は50日をかけて僕の手元に戻ってきたという、馬鹿馬鹿しく、また悔しいお話だった。

中国にEMSその他で荷物を送ったことは何度もあるが、以前は(いつ頃とは、はっきり言えないのだが)こんなことはなかった。食料品と薬を一緒に詰めていても、ちゃんと届いていた。

ところで、国際郵便で小包を送る際には、早く届く代わりに料金も一番高いEMSのほかに、それほどではない「国際小包」というのもある。これには航空便、SAL便(エコノミー航空便)、船便の三つがあって、順番に送料が安くなっていく。

僕は以前からSAL便をよく利用していた。EMSよりもいくらかは日数がかかるが、大して違わない。去年のいつだったか、これで中国に食料品などを送ったところ、送り先の中国人から「郵便局から私の家までの送料を請求されました」との知らせが来た。日本円にして数千円になる金額だ。なんでも、僕が日本で払った送料は中国の郵便局までのもので、その先は配達料が要るというのだ。初めてのことだ。

日本の郵便局に話すと「えっ!!」と驚いていたが、仕方がない。向こうでは新しいカネ儲けの方法を思いついたのだろう。じゃあ……と、僕も考え、次は試しにSAL便より料金が少し高い航空便で送ってみたが、結果は同じだった。

ついでに言うと「日中の郵便局に翻弄された50日間」のあと、やはり中国に頭痛薬だけを少量、EMSで送ってみると、自宅まですんなりと届いた。配達料は請求されなかった。

ビザの面でも、中国の官憲は何かとうるさくなってきた。僕は中国の大学で6年間、ボランティアで教えたあと、7年間ほど桂林と南寧で日本語の塾をやっていたが、当時利用していたのは「180日間」の「観光ビザ」だった。期限が切れる頃には日本に帰ってきて、1~2か月後にまた中国に戻っていた。180日間の観光ビザは1万円ちょっとで手に入り、まことに好都合だった。

ただ、ちょっと不便なのは、いったん中国から外に出ると、ビザが失効してしまう。たとえば、お隣のベトナムに旅行しようとしても、ビザのことを考えれば、あきらめざるを得ない。そんなことを現地に住む日本人に話したら、「2年間のマルチビザもあるよ」と教えてくれた。料金は7万円かそこらして、やや高かったが、中国からの出入りは自由である。おかげでベトナム旅行もできた。

ところが、今はそんな長い期間の観光ビザはなくなってしまった。昨年末から今年にかけて中国に行ってきたが、わずか1か月の観光ビザしかもらえなかった。旅行代理店によると、観光ビザでやってきて悪事を働く外国人が増えたので、そうなったとのこと。観光ビザで塾を開いていた僕もその中に入るのか、と気にならないわけでもないが、少なくとも塾で儲かったことは絶対にない。ずっと持ち出しだった。

話は少し変わって、中国ではかなり前から「グーグル」が使えなかったが、日本から持ち込んだ僕のパソコンではそれが自由に使えていた。規制が緩やかだったのだろう。ところが、今回は使えなくなっていた。たまたま知り合った大学生にそう話すと「任せてください」と言う。かなり時間がかかったが、これまでと同じように使えるようになった。しかし、翌日には元の木阿弥だった。

中国からの帰りは上海から大阪行きのフェリー「蘇州号」に乗った。上海―関西を往復するフェリーはほかに「新鑑真」というのもあり、僕はこの二十年来、中国との行き来にはどちらかを利用することが多い。そして、僕の知る限り、乗務員はみんな中国人で、かつては日本語がよく通じたが、だんだん通じにくくなってきていた。

そういうことは覚悟していたが今回、蘇州号に乗って衝撃を受けた。もはや日本語が全く通じないみたいだ。しかし、食堂の入り口に掲げられたメニューなんかは日本語である。「ビーフカレー 500円」なぞと書いてある。

そこで、食堂に入って日本語で「ビーフカレー」と注文してみた。すると、カウンタ―の男の子と女の子がびっくりしたように顔を見合わせている。入り口にある日本語のメニューがなんで通じないんだ? ちょっとカッとして「咖喱饭」と中国語で言うと、二人はにっこりして「辛いのですか、辛くないのですか」と中国語で応じてきた。

日中の関係はこのところ悪くないそうだけど、僕のように「末端」から眺めていて、以上のようないろんな不便に遭遇していると、果たしてそうかなあと思ってしまう。中国側から見てもそうなのかもしれないが、末端の日本人にとっては、中国とはなんか付き合いづらくなってきている。