新しい「仲間」変形性膝関節症

5カ月ほど前のことだった。夜寝ている時や、朝の起きがけに、左膝の関節あたりに異常を感じるようになった。少し痛い。どうしたのだろうか? 膝を伸ばしたり、曲げたりしていると、そのうちに痛みは消える。起きて歩き出すと終日、もう痛みは雲散霧消している。なんともない。ところが、翌日や翌々日、また同じようなことが起きる。

わが家から歩いて10分余りの整形外科医院に行ってみた。それこそ昭和以来、何か不具合があると、まずここに行っている。先生は長身でなかなかに男前なのだが、もう90歳に近いだろうか。少し前までは午前と午後に開いていたが、最近は午前中だけしか診察しない。さすがに体がきついのだろう。時には、どこかで同じく整形外科医をやっている息子がやってきて、代診している。医院のたたずまいは、見事に昭和レトロ風である。

老先生は1枚だけ撮ったレントゲン写真を見ながら、「これは変形性膝関節症ですな。治療しましょう」とおっしゃる。左膝の外側から、ちょっと痛い注射を打った後、「1週間おきにあと4回、来てください」とのこと。ただ、治療と言っても、膝の軟骨がすり減ってきているのだから、治しようはないようだ。注射は痛みを和らげるためで、確かに5回も打つと、夜中にそれほど痛みを感じなくなった。だけど、2週間、3週間、あるいはそれ以上が経つと、また痛くなる。時々、老先生に追加の注射をしてもらうようになった。

ちなみに、変形性膝関節症の「膝」の読み方は、訓読みの「ひざ」ではなく、音読みの「シツ」だそうだ。「膝」という漢字も、生まれて初めて辞書を見ないで書けるようになった。少しは賢くなった。

ところで、以前にも書いたように、僕は両手も親指のあたりが変形性関節症とやらで、少し力を入れて手を使った時には、ピリッと痛みが走る。時々、あまり効いているとは思えないけど「経皮鎮痛消炎剤」なるものを塗っている。日頃、大きめのものを手で動かす際には、片手でなく両手を使い、衝撃を和らげるようにも注意している。

それなのに、おやおや、足も手と同じような症状とか。楽しくはないなあ。そこで、失礼ながら、老先生よりは信用できそうな慶応病院に行ってみた。もちろん、整形外科で足が専門という医師にお願いした。診察前に膝のレントゲン撮影があった。4枚、5枚、6枚…かなり診察代が要るんじゃないの? 老先生のところでは、1枚だけだったのに。心配になってくるほどだった。でも、丁寧な診察のためだから、仕方がないか。

そして、診察室へ――かなり若い医師だ。レントゲン写真を見ている彼に、これまでの経過を説明した。「まあ、10人のうち7人は注射で痛みがなくなります」とのこと。僕の場合、「今すぐにどうこうという状況ではないので、様子を見ましょう。半年後にまた来てください。予約を入れておきます」ということで、診察はものの数分で終わった。患者が多すぎるせいだろうか、あまり親切、親身とは言えない。肩透かしを食ったような感じだが、それはそれでもいい。僕としては、いざという場合に備えて、大きな病院と関係を繋いでおけばいいのである。普段は、さっきの老先生のところに通っておけばいい。

僕は慶応病院との付き合いが割合に長くて、ほかの科にも原則3カ月に1回、定期的に行っている。例えば、腎臓・内分泌・代謝内科にはもうかれこれ10年や15年は行っているだろうか。通い始めたきっかけが思い出せないほどだ。近年は泌尿器科にも通い出した。両方とも女性の先生で、血液や尿の検査結果をもとに診察を受ける。薬も飲まされているけど、幸いなことに、診察時に注意を受けることはあまりない。腎臓・内分泌・代謝内科では「今回は少しだけ中性脂肪が高いようです」「お酒を飲む時は、水も一緒にお願いしますね」と言われる程度。泌尿器科では「尿はきれいです」と褒められて戻ってくる。

幸い今のところ、内臓はまあまあのようだ。天皇がつい最近やった前立腺MRI検査なぞはとっくに済ませていて、OKを貰っている。ところが、今度は手に続いて足の関節に新しく問題を抱えることになった。これも以前に書いたのだけど、2年ほど前、長年悩まされた脊柱管狭窄症の手術を慶応病院でやり、歩行中の足の難儀からは解放されたが、それも束の間だった。でも、命にかかわるような問題ではない。生活にそれほどの不自由もない。新しい「仲間」と気長に付き合っていこうと思っている。