「年賀状」の私的コンテスト 

年賀状の数は、出すのも貰うのも、寄る年波とともに随分と減ってきた。今や100枚に満たなくなったが、そんな中にも、貰って楽しいもの、こんな素っ気ない内容なら、頂かなくてもいいよ、と思うもの……などなどいろいろある。ついては、まことに勝手ながら、「私的コンテスト」と題して、1等賞から3等賞まで、それらを格付けしてみた。まずは3等賞(下の写真)である。ご本人たちの許可を得ていないので、お名前などは黒塗りにしている。少しぼかしも入れている。ご容赦ください。なお、賞金などはございません。

3等賞の2枚とも、スーパーマーケットかどこかで買ってこられた年賀はがきのようである。はがきの真ん中あたりには、自筆で何かを書き込める空欄もあるのだけど、真っ白なままである。なんとも、面白みがない。もっとも、2枚のうち1枚は、宛名を自筆で書いてくださっているが、もう1枚は宛名も印刷である。これじゃ、誰に年賀状を出したか、覚えていらっしゃらないかもしれない。朝日新聞の投書欄に、こういうのを「無言の年賀状」と書いてあった。まあ、お忙しい方なのだろう。

次は2等賞(上の写真)である。3枚ともはがきいっぱいに文章が書かれている。自分の身の回りのこと、日本の政治や社会に対する批判……読んでいて、教えられることも多い。どれも含蓄のある文章である。ただ、難は文章が長いことである。元日の朝、届けられた年賀状に目を通していて、これらに遭遇すると、「読むのはまたあとで」と、失礼ながら、ついパスしてしまう。「無言の年賀状」に対して「おしゃべりの年賀状」である。もうちょっと短くして頂けるとありがたい。

ところで、「じゃあ、お前さんはどんな年賀状を出しているんだい?」と尋ねられるだろうから、公開させていただくと、上の写真である。含蓄のない文章だし、難癖をつけた3枚の年賀状と同じく結構長くしゃべっている。ただ、「長い」とはいうものの、さっきの3枚よりは短くて、自筆で何かを書く場所も設けている。少なくとも「ご健康を祈っております」くらいは書き添えている。つまらない言い訳は別として、次は1等賞。3枚あり、うちまず2枚は下の写真である。

右側のウサギの絵は自分で描かれたものだろう。自筆で書き添えた文も、長過ぎず、短か過ぎず……かつ、内容に思いやりがある。この方は女性で、それこそもう何十年も前、僕が現役の新聞記者だった頃、僕が書いた記事に対して鋭い批判を頂いた。それがきっかけで一度だけお目に掛かったが、以後、全く会っていない。年賀状の交換だけが続いている。

1等賞の左側はいとこ夫婦からのもの。毎年、旅先などで撮った干支にちなんだ写真が添えてある。年中、年賀状に付ける写真のことを考えているんじゃないか、と思うほどに、なかなか凝っている。「あけましておめでと兎ございます」も、それなりにしゃれている。3等賞の年賀状と比べると、力の入れようがまさに月とスッポンである。

1等賞の最後は、バニーガールを描いた、ちょっとエロチックな上の写真である。長年の友人で70歳過ぎの漫画家・版画家だ。この方に限っては、知る人ぞ知る「武田秀雄」というお名前を出すことにする。ロンドンの大英博物館に招かれて個展をやるほどのお人なのだが、残念ながら国内ではあまり知られていない。なるほど、ウサギ年の2023年は英語で言うと「Year of The Bunny」だとか。笑ってしまう。Bunnyはウサギの幼児語で「うさちゃん」といったところだろう。

よし、僕も来年は1等賞を狙えるくらいの年賀状に挑戦してやろう。今回のコンテスト主催者の義務でもあろうか。多分、実現しない、今年の抱負である。