「速歩き」を目指して奮闘中

慶応義塾大学病院で「腰部脊柱管狭窄症」の手術をし退院してから、ひと月あまりが経った。この間、暇に飽かせて毎日平均1万数千歩、雨の日も、せっせと「ウォーキング」に励んでいる。どんなに少ない日でも1万歩以上、多い日には2万歩になる。

手術の前は、脊柱管狭窄症からくる足の痺れで、速く歩くのがつらかった。街中を歩いていると、若者ならともかく、いい年齢のおじいさんやおばあさんにも追い越され、悔しい思いをしていた。手術をしたからには、これからは攻守逆転じゃないけど、連中をどんどん追い抜いてやろうと思っていた。

ところが、そうは問屋が卸してくれない。僕自身は普通に歩いているつもりなのに、やはり普通に歩いているように見える年配の人たちが、僕を追い越していく。そのうちに背中が見えなくなる。手術後だけに、よけいに悔しい。いったい、僕の歩行速度はどれくらいなのか?

埼玉県川越市の僕の住まいから、電車の下り線で数駅行ったところに「国営武蔵丘陵森林公園」というのがある。最寄りの駅から公園の入り口までさらに3キロメートルあるが、そこには遊歩道が設けられていて、その100メートルごとに公園までの距離を示す掲示がある。そのことを以前から知っていたので、ここに行って僕の歩行速度を測ってみることにした。

某日、100メートル歩くたびにストップウォッチで測ってみると、1分20秒前後かかっている。時速にすると、4・5キロほどである。普通、人間が1時間で歩く距離は3キロから4キロ、5キロと言われている。それから見れば、1時間4・5キロの速度はまあまあである。だけど、僕はこの調査の際、努力して結構せっせと歩いた。この速さで続けて1キロ、2キロと歩くのは無理だろう。息が切れてしまう。

ついでに、歩幅も調べてみた。すると、100メートル行くのに、160歩前後もかかっている。歩幅は60センチメートルちょっとである。エッ、そんなに狭いの? 測り間違いじゃないの? そう思ったくらいに狭い。

ネットで調べてみると、「歩幅の目安」は「身長×0・45」と書いてある。それが正しいとしたら、僕の歩幅は75センチほどはないといけない。20年ほど前に測った時には、確かそれくらいだった。ところが、いま街中で、同じように歩いているつもりなのに追い越され、さらには差を広げられていくのは、今の狭い歩幅のせいではないか? どうもそんな気がする。

たまたま雑誌『AERA』を繰っていたら、「ウォーキングは歩数より速度」という特集をやっていた。それによると、ダラダラ1万歩を歩いても、筋力や持久力に変化はなく、何もしないのと、ほとんど変わりはないとのことである。1日に1万数千歩を歩いて、少し得意になっていたのに、頭から水を浴びせられたような気分である。
f:id:nan-no:20201010161203j:plain
そして、「速歩き」と「ゆっくり歩き」を組み合わせるのがもっとも効果的だという。「理想的な歩行姿勢を作る16のポイント」と称した、上のようなイラストも載っていた。いわく「頭の揺れを小さく」「肩の力を抜く」「背筋を伸ばして肩を開く」「膝を開かない」「つま先や膝を正面に向ける」などなど……そこまで気を配るなんて、ひと口に「歩く」と言っても、なかなかに奥が深い。

そして「速歩き」の速度なのだけど、時速6~7キロが理想的だとのこと。走り出す寸前である。以前、僕はよく各地の「ウォーキング大会」に出ていたが、トップでゴールに戻ろうとする人たちは、確かにそんな速度で歩いていた。僕も決して遅かったわけではない。一緒に歩いていた仲間から「なんでそんなに速く歩くんだい? 周りの景色が見えないじゃないか」と、文句を言われたことさえある。

言い訳をすると、僕はこの10年来、脊柱管狭窄症で足をかばうあまり、歩幅がだんだん狭くなっていったのだろう。よし、これからは一念発起、歩幅を今より1センチ、2センチ、そして5センチ、10センチと広げていこう。そして、時速7キロとまではいかなくても、せめて6キロで20分や30分、続けて歩けるのを目標にしよう。

とは言っても、寄る年波、そんなことが可能かどうかは分からない。だけど、「目標」ができたことだけは確かである。