せこくて納得できない「ビール系飲料」の「酒税一本化」

古くはトイレットペーパー、最近ではマスク、もっと最近ではうがい薬「イソジン」の買いだめ・買い占め――どうも感心できない。みっともない。そう思っていた僕なのだけど、ついに同じような行動をしてしまった。

10月から始まった「ビール系飲料」の「酒税一本化」がきっかけである。僕はふだん家では、近くのスーパーから買ってくる「新ジャンル」のビール系飲料を飲んでいる。「第3のビール」とも呼ばれる。500ミリリットル缶がこのスーパーでは145円。本来の「ビール」の245円、あるいは255円に比べると、ずっと安い。値段の面では、ビールと第3のビールの間に「発泡酒」があるが、僕はもっぱら第3のビール派である。

娘あたりからは「生活に困っているわけではないだろうから、ちゃんとしたビールを飲んだらどうなの」とも言われる。しかし、たまには双方を飲み比べてみるのだけど、安い方だって決して負けてはいない。いや、こっちの方がうまいじゃないかとも感じる。ビール会社の努力に頭が下がる。安くてうまければ、それに越したことはない。

それが10月からの酒税一本化のあおりで値上がりした。この原稿を書いているのは9月なので、正確にはどの程度、値上がりしたのかは分からないが、行きつけのスーパーの掲示には「500ミリリットル缶は酒税が14円上がります」とあった。これまでは1缶145円だったから、そのまま小売価格に反映されると、なんと1割もの値上がりである。
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ならば、日ごろの信念?を捨てて、買いだめ・買い占めも辞さず……というわけで、我が家には値上がり前の第3のビールが山積み?となっている(上の写真)。

ビール系飲料の酒税一本化というのは、これまでビール、発泡酒第3のビールで税額が違っていたのを同じにしようということだ。例えば、これまでは350ミリリットル缶のビールには77円の税金が掛かっていたが、発泡酒は(麦芽比率により少し違って)62円か47円、第3のビールに至っては28円と、ぐんと安かった。当然、小売価格もその分、ビールよりずっと安かった。

ところが、酒税一本化の計画では、この10月と2023年10月にも税額が変わり、最終的には2026年10月、350ミリリットル缶の場合、税額はビールも発泡酒第3のビールも「55円」に統一される。これまでに比べ、ビールの税額は3割ほど下がるが、第3のビールのそれはなんと倍増である。

もちろん、僕も本来のビールが嫌いなわけではない。それどころか、ビアホールで飲む「生ビール」はたまらなく好きだ。例えば、9月半ばに来たクレジットカードの請求書を見ていたら、8月には4回、東京・池袋のビアホールに通っている。エッ、1か月に4回も!? 請求書が間違っているのではないか。疑って手帳を繰ってみたら、どうもそうではないようだ。
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前回のブログにも書いたが、8月下旬、僕は慶応義塾大学病院で脊柱管狭窄症の手術をした。その前には、検査入院やPCR検査があって何回も慶応病院に通った。それが終わった昼下がりは必ず、ひとりでビアホールに立ち寄った。そしてまずは、生ビールが1リットル入っている特大の「リッタージョッキ」(上の写真)を注文していた。これが値下がりしてくれれば、まことに嬉しいことである。

というわけで、ビール系飲料の酒税一本化はぼくにとって、いい面、悪い面の双方があるのだけど、もう少し突っ込んで考えてみると――
「若者のビール離れ」とも言われるが、ビール系飲料全体の消費はこのところずっと減っている。しかし、その中身を見ると、価格が安い第3のビールは健闘している。本来のビールが冴えないのは、第3のビール発泡酒に比べた割高感にあるのではないか。我が国のビールの税率は(どこまで正確かはやや自信がないけど)ドイツの19倍、米国の9倍にもなると言われる。

それでも、国としては、ビール系飲料の税収をさらに増やしたい。それには、よく売れている第3のビール増税する。言ってみれば「庶民いじめ」である。一方で、「金持ち?向け」の本来のビールのほうは少し減税して需要を喚起し、結果的には税収増につなげる。税額がビールと第3のビールの中間にある発泡酒麦芽の比率によって税額が2段階に分かれている)は、税額を微調整していき、最終的にはビールや第3のビールと同じにする。

すべては「税収増」という目的から来ている。せこいなあ。納得できないなあ。いや、山積みになった我が家の第3のビールを眺めていると、おのれのせこさにもまたうんざりしてくるのである。