台湾 外食事情

台北で民泊していた家は、朝夕食つきだった。したがって、昼食だけは外食ということになる。民泊先の奥さんの話だと、朝夕食はどれも伝統的な台湾料理で、それはそれでおいしく、いつも残さずに平らげていた。だけど、外食となると、気軽なファストフード、それも日本でもなじみだった店が多いので、足はついそこに向いてしまった。

たとえば、「吉野家」(上の写真)。店構えは日本のそれと同じである。ところが、店の外にあるポスターを見ると、一番人気だと宣伝している牛丼が124元(1元≒3・7円)とある。日本で言えば、380円の並盛に違いない。それが124元×3・7円≒460円。うーん、2割ほど高いなあ。原材料を日本から輸入しているわけではないだろうに、どうしてだろうか? けちな僕は二の足を踏んで、結局は入らなかった。ちなみに、台湾でも日本の消費税に当たる5パーセントの「営業税」があるが、すべて「内税」とのことだ。

しばらく歩いて百貨店の地下に入ると、ファストフードの店が並んでいる。「ごはん処大戸屋」があった。日本でも時々入る店だが、店先のサンプルを見ると、一番安いのが270元、1000円である。あと、300元、320元、330元・・・ホッケの塩焼き定食に至っては370元、1400円近くする。ここも二の足を踏んで、店内をのぞくだけで終わってしまった。帰国してから日本の大戸屋で食べたら、シマホッケの炭火焼き定食が税込みで965円だった。

後日、ネットを見ていたら、米ニューヨークの大戸屋では、シマホッケの塩焼き定食が3000円以上もしているという。日本の3倍である。これを書いた金融マンはその理由を、円安のほか、飲食店やサービス業が日本で低価格競争をしていても、海外に進出すると、大きな利幅を求める傾向があるからだと解説する。

なるほど、外食から話が少し飛ぶけど、台北の「無印良品」でもそう感じた。台湾に行く前、東京の無印良品で買った下着のパンツは1枚500円足らずだった。ところが、台北無印良品でまったく同じパンツを見つけたが、1枚210元、780円ほどもする。100円ショップの「DAISO(大創百貨)」でも、30枚の薄いノートが49元、180円ほどもして驚かされた。

話を台湾での外食に戻すと、台北大戸屋の近くに釜揚げうどんの「丸亀製麺」(上の写真)があった。ここも日本そっくりの店構えで、釜揚げうどんの「中」が69元と、250円ちょっと。僕が日本で行く丸亀製麺では「並」が290円だから、これだと日本より安めである。うどんに追加するコロッケが34元、125円ほどで、やや高めだけど、まあまあだな。そう思って、この店には何回も通った。

民泊先の家の夕食はアルコール抜きだった。それで、食事前には近くの「セブン・イレブン」や「ファミリーマート」に行き、店の中でわびしく缶ビールを飲んでいた。値段は台湾ビール、青島ビールだと、500ミリリットルの缶が40元台。スーパーマーケットでは30元台。僕がコンビニで飲んでいた青島ビールは41元、150円ほど。安くて、飲み助の僕にはありがたかった。

台北の別の百貨店で、日本風の丼物の店があった。入ってみようかと思って、店の前にある上の写真を見て、ちょっとのけぞった。「サンマの塩焼き丼」である。僕はサンマは大好きである。中国にいたときも、スーパーから冷凍のサンマを買ってきてよく食べていた。だけど、このサンマ丼は140元、520円ほどと、高くはないのだが、どうも食欲をそそらない。

サンマ丼の隣には「山海四品ミックス丼」(上の写真)もあった。「四品」とはサケ、サバ、トリ、ブタのことだという。290元、1070円ほど。これもサンマ丼と同じく食欲が湧いてこない。もちろん、店には入らなかった。

台湾の最南端の都会である高雄に行き、街をうろついていると、上の写真のような看板を見つけた。蛇料理の店である。台湾では蛇を食べるとは聞いていたが、初めてお目にかかった。値段を見ると、たとえば「蛇肉麵」が250元、900円ちょっとだから、高くはない。でも、看板に描かれた蛇がいかにも怖くて、ここもパスしてしまった。

いま、ここまで書いてきて恥ずかしくなっている。外見だけで、そう簡単にはおじけづかず、サンマ丼や蛇肉麵も試してみるべきだった。どうしても、のどを通らなければ、途中でやめてもいい。僕も昔は新聞記者だったのだから、何にでも興味を持つべきだった。

それなのに、「台湾 外食事情」と称しながら、実際に試したのは、釜揚げうどんとコンビニでの缶ビールという、まことに貧しい経験をだらだらと書いてしまった。次回、台湾に行った時には、まずはサンマ丼、蛇肉麵あたりから挑戦してみようと決心している。