「108歳」まで生きるには……

つい最近、テレビで元気な姿を見たばかりなのに……そんな人が相次いで亡くなった。ひとりは神戸大名誉教授の政治学者で、東日本大震災復興構想会議議長や防衛大学校長を務めた五百旗頭真(いおきべ・まこと)さんだ。3月6日、自身が理事長を務める「ひょうご震災記念21世紀研究機構」で執務中に不調を訴え、急性大動脈解離で死去した。新聞に大きく報じられた。80歳だった。

大動脈とは心臓から全身へと血液を送る管のことだが、この大動脈の内側に亀裂が入り、血液の通り道が別にもうひとつできた状態を解離と呼ぶとか。恐ろしい病気で、高血圧の人に多く発生するそうだが、五百旗頭さんも血圧が高かったのだろうか。

実は、彼は僕と同じ大学の同じゼミの何年か後輩にあたる。彼は優秀、僕は平凡な学生であったと思うし、特に付き合いがあったわけではない。ただ、僕が新聞記者をしていた頃、パーティーなんかで彼を見掛けると、近づいて行って、先輩風を吹かせたりした。彼の死を悼む各界の人たちの言葉を新聞で読むと、周りから尊敬され、好かれていたようだ。自慢できる後輩を失ってしまった。

もうひとり、驚いたのは、2月20日に死去した俳優の山本陽子さんだ。当日、所属事務所社長の甥と一緒にいて元気だったのに、帰宅直後に急性心不全で亡くなった。81歳だった。彼女は死去のほんのちょっと前、テレビ朝日の番組「徹子の部屋」に同じく俳優の高橋英樹さんと出演し、僕も自宅で見ていた。最近は4月からの舞台公演を控え、準備に取り組んでいたとか。心不全も心臓の病気や高血圧などに関係があるらしい。

僕は今83歳だが、茶寿つまり108歳まで、あと四半世紀は生きてみたいと思っている。特に何かをしたいわけではないが、地球が、世界が、どうなっているか、自分の目で見てみたい。今年の年賀状ではそんな決意!?を述べている。ちなみに、茶寿がなぜ108歳かと言うと、「茶」の草冠(くさかんむり)は「十」がふたつだから、合わせて「二十」、草冠の下は「八十八」だから、合計「百八」になる。まあ駄洒落の類である。

そんな僕にとっては、元気で、しかも僕よりも少し若いおふたりに死なれたのは、ちょっとショックである。108歳という目標に赤信号が灯ったような気もしてしまう。ただ、おふたりの死に関係していそうな血圧については、僕は十分に注意している。実は15年ほど前、中国の桂林にいて大学で教えたり、自分で日本語の塾を開いたりしていた頃は、血圧が随分と高かった。病院に行くと「今すぐに入院してください」と言われたほどだ。

しかし以後、帰国の度に慶応大学病院に通い、降圧剤を処方してもらってきた。今では血圧は正常で、たまに高いことがあっても、もう一度測ると、正常に戻る。108歳の障害物にはなっていない、と自分では思っている。

もうひとつ最近、死を大きく報じられた有名人は、「ドラゴンボール」などの作品で世界的に知られる漫画家の鳥山明さんだ。3月1日に急性硬膜下血腫で亡くなったのだが、まだ68歳だった。僕は108歳までです、なんて言うと、怒られてしまいそうである。ところで、急性硬膜下血腫の主な原因は交通事故や転倒などでの頭部の外傷とのこと。鳥山さんはどこかで、頭を強く打ったのだろうか。頭部の打撲については、僕は血圧同様、かなり気をつけているつもりだ。つまり、自転車には乗らないようにしている。

きっかけは、毎日のように自転車に乗っていた何年か前のこと。スーパーのそばで自転車にまたがると同時に無理やりほぼ180度、方向転換しようとしたら、自転車もろとも倒れ、僕は頭から地面にたたきつけられた。近くにいた人が2~3人、「大丈夫ですか」と寄ってきてくれたくらいの衝撃だった。

幸い、けがは大したことはなかった。僕は子供の頃から、体のバランスが悪いのか、しょっちゅう転ぶ。ただ、なぜか大きなけがはしない。が、この日をきっかけに以後、自転車に乗るのはきっぱりとやめた。いつか致命的な大けがをするかもしれないし、予防のためにヘルメットをかぶるのも面倒くさい。もっぱら歩いている。

それやこれや、血圧にも頭部の打撲にもそれなりに気を配っている。おかげさまで、懸案の108歳にも少しずつ着実に近づいているのかもしれない。