本庶佑さんの「ノーベル賞」に中国でも絶賛の嵐!?

京都大学本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授が今年のノーベル医学生理学賞を贈られることになった。免疫をがんの治療に生かす手がかりを見つけ、がん治療に革命をもたらしたというのがその理由で、米国人の学者との共同受賞である。

日本のメディアはもちろん大騒ぎしているが、中国のネットも「日本人がまたノーベル賞を受けた」などと、日本に負けず劣らずに騒いでいる。日本人ってなんで、こんなに次々とノーベル賞をもらうの? 翻って、中国の学者はどうしているの? といったところに関心があるようだ。

ネットの報道を見ていくと、2000年以来、日本は18人(米国籍の2人を含む)がノーベル自然科学賞を受けたと伝えたあと、中国の「惨状」を嘆いている。いわく、中国では1978年に中国共産党中央委員会の肝いりで「全国科学大会」が開かれ、当時の最高実力者の訒小平氏が「科学技術はすなわち生産力だ」などと述べて、その振興を命じた。以来40年、中国の科学技術は大きく進歩したが、ノーベル自然科学賞を受けたのはたった1人だけというのだ。

日本には「科学技術基本計画」なるものがある。そこでは「21世紀前半の50年でノーベル自然科学賞の受賞者30人」という目標もあるらしい。これが中国のネットでも紹介され、「日本の受賞者は2018年ですでに18人だから、『早送りボタン』を押しているみたいだ」とまで書かれている。

そのほか、日本を賞賛し、中国の現状を嘆く言葉がネットには次々に出てくる。「日本人は科学と教育を大切にしている」「なかでも基礎科学、基礎研究の重要性を深く認識している」「結局、日本は何が正しかったのか。我々は何をしていたのか」「中国では国内で研究するのが難しいので、多くの才能が海外に行ってしまっている」「本庶さんは教科書に書いてあることを疑えと言っている。我々も同じように教科書を疑ってきたのに、なんでこんなに差がついてしまったのか」「中国の学者は会議と宴会が好きだが、日本の学者は実験室と午後のお茶が好きだ」といった具合である。

基礎科学、基礎研究の重視については、今の日本では決してそうではないだろう。本庶さん自身が警鐘を鳴らしているので、褒められ過ぎのようだが、とにかく面はゆい限りの報道である。


今回の受賞はがん治療と関係が深く、それだけに誰もが身近に感じる。漫画にもさっそく登場し、共同受賞者の米国人学者とともに似顔絵も描かれている。漫画はその一部である。(写真上 制作 Sheldon 果殻)

1年前、日系英国人のカズオ・イシグロ(石黒一雄)氏がノーベル文学賞を受けた時も、中国のネットは結構騒いでいた。そして、日本人のノーベル賞受賞者が続く理由として、日本の紙幣の肖像画を挙げていた。1万円札は福沢諭吉、5千円札は樋口一葉、千円札は野口英世で、すべて知識人である。つまり、知識人を尊敬する風潮がノーベル賞の連続受賞につながっているというのだ。

ちなみに、中国は100元札(1元≒16円)から50元札、20元札、10元札、5元札、1元札に至るまで、すべてが毛沢東である。さっきの記事の筆者はこれには全く触れなかったが、言外に皮肉っているみたいだった。

まあ、いろいろと褒めてくださっても、受賞者の数ではしょせん米国にはかなわない。ノーベル自然科学賞に米国人のいない年はないだろう。そう考えながら、読み進んでいくと、(真偽のほどはよくは分からないが)米国人の受賞者と言っても、移民が多い。2000年以来、07年までにノーベル自然科学賞を受けた米国人のうち、移民を除き、米国で教育を受けた人に限ると受賞者は23人である。

これに対し、2000年から07年までにノーベル自然科学賞を受けた日本人17人はすべて日本で教育を受けている。国の広さや人口を考えれば、なんとすごいことか。そう日本を絶賛してくれている。

話は少し脱線するけど、僕は中国共産党はどうも好きにはなれない。そんな日本人は多いだろう。でも、ノーベル賞にしろ、先般のサッカーのワールドカップにしろ、中国人自身は蚊帳の外なのに、日本人が何かで成果を挙げたら、自分たちアジア人の代表ということなのか、素直に日本を褒めてくれる。そんな中国人に僕は「懐の広さ」といったものを感じるのである。