「1000円カット」を求めて

明けましておめでとうございます
月並みな表現ながら 本年も何とぞよろしくお願い申し上げます

新年早々、けち臭い話で恐縮ですが、皆さんは散髪代に1回、どれくらい使っていらっしゃいますか。僕の30日か40日に1回の散髪代は、このところずっと1000円ぽっきりです。1200円、1300円の散髪屋にはめったに行きません。

話を昔に戻すと、もう30年以上も前、僕が東京・築地の新聞社から六本木のテレビ局に出向していた頃は、いつも勤め先の近くで散髪していたが、料金は3800円だった。最近、僕が通っている「カットのみ」の店とは違って、顔を剃り、頭を洗いといった普通の散髪屋だった。この「3800円」という料金をなぜかよく覚えている。さらに言うと、築地の新聞社に戻れば、社内に散髪屋があり、料金は2100円。かなりの節約になるのだけど、ついでの折に、たまに行くだけだった。当時は結構高給取り(?)だったので、六本木の3800円をそれほど高いとは思わなかった。

だけど、年金生活者の今となっては、そうは言っておれない。顔を剃ったり、頭を洗ったりは、自分でできる。散髪屋ではカットだけで十分だ。で、もっぱら1000円カットの散髪屋に長く通ってきたのだが、最近は「1000円カット」とは名のみで、わが家の近くの店では1200円、1300円へと値上がりしてきた。それはそれで仕方がないのだけど、僕としては正味の1000円カットがありがたい。

そこで、近所をうろうろしていたら、いつだったか、新しくできたスーパーマーケットの裏通り、それまではあまり人通りもなかったところに、正真正銘の1000円カットの店を見つけた。入ってみたら、あるじの腕前は悪くないようだ。ところが、店には欠点もある。このあるじはどこかの職業学校で講師もしているとかで、授業があればそれを優先してしまう。そのため、平日に行くと、店が閉まっていることがよくある。土日に行くと、開いている確率が高い。そんな不便もあるが、1000円には代えられない。このところはもっぱら、ここに通っている。15分かそこらで済むのもありがたい。3人、4人と、先客がいても、暇人の僕にはどうってことはない。

最近、もう1軒、近くに1000円カットの店を見つけた。初回は1200円なのだが、次に2カ月以内に行けば、65歳以上のシニアは1000円にするとのこと。今の行きつけの店に何かあったら、次はここに通おうと思っている。

話は変わるが、新聞に毎日載っている「首相動静」を眺めていると、岸田文雄首相は月に2回は散髪に通っていらっしゃるようだ。12月も10日と23日の土曜日、ともに東京・鍛治町の「ヘアモードキクチ 神田日銀通り店」で散髪している。どんな店なのか、お値段は? ネットで調べてみたら、一番人気は「アイブロウカットコース+頭皮クレンジング」なるもので、料金は7700円。もっと高いコースも安いのもある。

先日「サラリーマンの街」とも言われる東京・新橋で見た理髪店の料金表には、一番安いカットコースが5500円とあった。岸田首相が通っている理髪店も特に高い店ではないようだ。そして、新橋の店で料金表をじっと眺めていたら、店の人から「いらっしゃいませ」と声を掛けられ、「1000円カット」の僕はどぎまぎしてしまった。

ところで、岸田首相は理髪店で実際にどのくらい払っているのか、ケチな僕としては気になる。で、これもネットで検索してみたら、以前に通っていた別の店では「1万890円(税込み)」を払ったとの記事を見つけた。新聞の「首相動静」を見る限り、岸田首相の理髪店での滞在時間はゆうに1時間を超えている。この数字は信憑性があるようだ。とすると、彼の1カ月の散髪代は2万2000円ほど。なんと僕の2年分の散髪代に相当する。

僕はそれ自体に文句を言うつもりはない。いわゆる「裏金」ではなく、自分のカネで払っているのなら、全くおかしくはない。ただ、最近の朝日新聞に「非常時もきのう鉄板きょう四川」という読者の川柳が載っていた。日頃、高そうな料理店を巡っている岸田首相を皮肉ったものだ。岸田サンはそう悪い人には見えない。でも、物価高に苦しんでいるかなりの国民に対する心配りに欠けている。散髪にろくに行けない人もいるだろう。そんな世の中で、この御仁は能天気だなあ。「1000円カット」一途の僕はそう感じるのである。