「せこさ」比べ

僕は生来、せこい性格なので、他人の「せこさ」が人一倍、気になる。自分のことはさておいて、他人のせこさが許せない。頭にくる。

なかでも日頃、憤慨しているのは、スーパーマーケットなどのいわゆる「ポイント」についてである。その店のカードを持っていると、普通200円買うごとに1ポイントつまり1円分がカードにたまる。たまったポイント数は買い物の都度、レシートに示される。それはそれでいいのだけど、僕がよく行くスーパー4軒のうち3軒では、これを500ポイントためると、やっと500円の「お買物券」が出てくる仕組みになっている。

言い換えれば、500ポイントためなければ、例えば300ポイント、400ポイントの段階では、このポイントを現金として使えない。極端な話、何らかの事情があって、その店に行けなくなったら、せっかくためたポイント、つまり300円、400円が消え、店のものになってしまう。こういうのは、実にせこいのではないか。1ポイントでも、それは僕のカネなのだから、たまった段階で使えるようすべきだろう。

いや、まだこれは許せる。レシートにポイントの有効期限は書いてないから、そのうちにまた同じ店に行くようになったら、300ポイント、400ポイントは多分まだ有効だろう。ところが、僕がたまに行く自宅近くの本屋は、やはり500ポイントで500円の買物券なのだが、レシートには「ポイント有効期限:6カ月」とある。せっかくためていたポイントも、わずか6カ月で次々に失効していくのだ。ポイントの有効期限を永遠にしろとは言わないが、この店で買物券を得るためには、半年の間に本を10万円以上買わないといけない勘定だ。普通の人には至難の業である。

ただ、スーパーなどの店側も最近、僕のようなせこい客からの苦情もあってか、買物券の不条理さに気づいてはいるようだ。僕の見るところでは、これをやめて、たまったポイントをそのままいつでも現金代わりに使えるようにするところが増えつつある。さっき、僕がよく行くスーパー「4軒のうち3軒」では買物券うんぬんと書いたが、残る1軒も以前は500ポイントで500円の買物券だったが、最近ではためたポイントを自由に使えるようになった。それが当然というものだろう。

ところで、以上に書いた500円の買物券は、500円以上の買い物をすれば、現金同様に使えるのだが、最近、某店で同じ500円券なのに、絶句するせこさに出くわした。

これははっきりと店の名前を書きたい。東京近辺を中心に営業している「ルミネ株式会社」なるものがある。JR東日本の子会社で、「ショッピングセンターの管理及び運営」などを手掛けている。ここのカードを持っていると、多少の年会費は要るけど、買い物の代金が5%引きになる。それに引かれて僕も会員になっている。我が町川越にも「ルミネ川越」があり、昨年末、ショッピングセンター内の書店で本を何冊か買った。

すると、抽選券をくれ、何枚かのうちの1枚が「500円」の当たり券だった。小躍りして同じセンター内のスーパーに行き、代金600円余りになる缶ビール2個と当たり券をレジに差し出した。現金100円ちょっとで、缶ビール2個が買えるわけだ。得したなあ。ところが「お客様、1000円以上買っていただかないと、この券は使えません」と言われ、券の裏側にある表示を指し示された。見ると、「税込み1000円以上で1枚ご利用いただけます」とある。つまり、500円の当たり券を使いたければ、あと500円以上買えというのだ。

虚を突かれた。慌ててビールを買い増して、代金の合計を1000円以上にし、500円の当たり券を使ったが、よく考えると、腹が立ってきた。むしろ、当たり券を破り捨ててやってもよかった。

――と、以上はたかだか500円ほどをめぐる話だけど、自民党安倍派を中心とする政治資金パーティーの話は規模と言い、悪質性と言い、まあ、せこい。パーティーで集めたカネの流れを法律に従ってきちんと報告せず、各議員が数百万円から数千万円を「裏金」として懐に入れてしまう。パーティー券は1枚2万円もするのに、ろくな食い物も出さず、利益率は90%というのもあるとか。せこさ比べで僕を「序ノ口」とすれば、安倍派の皆さんはまさに「横綱」ではなかろうか。