日本人 ギョーザをはじめとして中国製冷凍食品から農薬が次々と出てきています。中国の食品は信用できない、と日本では大騒ぎです。ほんとに中国というのは困った国です。北京オリンピックも近づいているんですから、もっとちゃんとしてもらわないと困ります。
中国人 この事件のことは中国でも報道されていますから、私も知っています。でも、こんなことで大騒ぎして中国を非難するなんて、日本人も少しおかしくはありませんか。
日 エッ、なんですって！ これは日本国民の生命の安全にかかわる大問題なんですよ。大騒ぎするのが当然じゃありませんか。製造元の中国を非難して何が悪いんですか。
中 でも、あなただって、中国人がどれほど不衛生で、衛生観念に乏しいか、それに、農村ではやたらに農薬を使っている、残留農薬だらけの野菜なんかが市場に並んでいる、そんなことはよくご存知でしょ？
日 えぇ、まあ・・・。
中 私なんか、レストランで食事する時だって、安全かどうか心配です。それなのに、中国製の冷凍食品を日本人がこれまで平気で食べていたなんて、私には信じられません。農薬が入っていたからって、今さら騒ぐほうがおかしいですよ。入っているのは当然ですよ。
日 でも、それを輸入していた商社や、消費者に売っていた生協などが「安全です」と宣伝していたようです。消費者はそれを信用していました。
中 じゃあ、商社なんかは中国の工場に日本人を常駐させて、安全性を毎日きびしくチェックしていたんですかね。
日 いや、最初に問題になった冷凍ギョーザの場合だと、ときどき検査に行くだけだったみたいですね。
中 ほれ、ごらんなさい。この事件の責任は日本側にあるんですよ。さっきも言ったように、衛生観念に乏しい中国人にすべてを任せていたんですから。それなのに、いかにも中国側が悪いみたいに騒いでいる。私は不愉快ですよ。
日 じゃあ、もし、立場が逆だったらどうですかね。例えば、日本製の冷凍食品を食べた中国人が食中毒を起こした。そして、しかるべき機関が調べたら、食品から農薬が出てきたとします。そんな場合、中国人はどうしますか。
中 まずは、その商品を売っていた店の責任です。消費者は店に対して損害賠償を求めるでしょうね。
日 それを製造した日本のメーカーを恨みませんか？
中 直接の関係はないですね。食中毒を起こした消費者は、それを売っていた店を恨むだけです。もちろん、店は輸入業者に、輸入業者は日本のメーカーに文句を言うでしょう。でも、日本のように、国を挙げて相手の国を批判したりはしないと思いますよ。それに、私が一番不思議なのは、日本の消費者が商社や冷凍食品を売っていた店をそれほど非難しないことです。彼らが中国人と組んで大もうけしてきた、その結果、日本の消費者が被害を受けた。日本の商社などがやったことは犯罪ですよ。
日 それはそうと、日本側の調べだと、農薬は中国で混入したとしか考えられません。ところが、中国政府や冷凍食品のメーカーは「中国で農薬が混入した可能性はきわめて低い」とか言って、この問題を早く終わらせたがっていますね。
中 こういう大事件が起きた時、中国人がまず何を考えるかをご存知ですか。あなたも少しは中国語を勉強されたんでしょ？ 中日辞典にも載っている言葉です。中国語で言ってごらんなさい。
日 はぁ・・・。
中 「大事化小、小事化了」というんです。大きな問題は小さくし、小さな問題はないことにするのです。
日 でも、今回の事件については、中国側も日本側と協力して「真相究明」に努めると言っていますよ。
中 それはうわべだけのことです。本音は事件をうやむやにして、早く終わらせたいんです。事件が起きた時からその方針ははっきりとしています。真相が分かったら、かえって困るでしょうからね。
日 おまけに、中国側は自分たちのほうが被害者だとまで言っています。加害者のくせに被害者だなんて、実にけしからんことです。ああ、中国人って、嫌だ・・・。
中 そんなの、中国ではよくあることです。不用意に騒いだほうが負けます。今度の場合だって、日本側は「農薬が入っていた」と騒ぐ前に、中国の工場をひそかに調べて証拠をつかむ、そして、それをまず突き付けたら、中国側もギャフンと言ったかも知れませんね。今度のように、まず日本で騒ぎ出したら、いくらでも証拠を隠せるじゃありませんか。中国人は賢いです。懐が深いんです。一筋縄ではいきません。日本人ももっと中国人、とりわけ漢民族のことを勉強してください。このままだと、日本人は中国人の手の平で踊っているだけですよ。
日 孫悟空みたいですね。まあ、それはそれとして、ギョーザのうまい店がありましたね。これから食べに行きませんか。私がおごりますよ。
中 ありがとうございます。じゃあ、この次は私が手作りのギョーザをご馳走します。怖いから肉は使いません。わが家の庭で作った野菜だけのギョーザです。安心、安全です。
