四輪車「もどきエンブレム」図鑑 日本メーカー篇

韓国の「ヒュンダイ」(現代)は「ホンダ」の「H」のエンブレムを傾けて自分のものにしてしまったが、中国のメーカーも「H」をいじめている。桂林の街で見掛けたのは二つだが、随分な加工のしようである。これでも遠くからだと「H」に見えてしまう。ちなみに、自動車の販売店を回っていたら、同じ店が「ヒュンダイ」と、「H」の下半分がない「ホンダもどき」の両方を取り扱っていた。


一方、「もどき」の数の多さでは「トヨタ」が群を抜いている。下の4枚の写真のうち、一番上が本物、あと三つが「トヨタもどき御三家」といったところか。「もどき」の一番目は以前、トヨタから商標権侵害で訴えられたことがある。結果がどうなったかは知らないが、相変わらず桂林の街を走っている。「もどき御三家」のうち、桂林では三番目の車が大変に多い。



トヨタもどき」はまだある。下の5枚の写真のうち最初の2枚がトヨタの「クラウン」と「レクサス」の本物のエンブレム、次の2枚は「もどき度」は低いが、「クラウン」つまり「王冠」から連想したみたい。最後の「レクサスもどき」はふてぶてしくて本物よりも存在感がある。




「日産」はトヨタ、ホンダと並んで本物の車はいっぱい走っているが、「もどき」の方はなぜかあまり見掛けない。見つけたのが下の二つ。これも「もどき度」は低いが、遠くからだと「NISSAN」に見間違える。二つとも同じメーカーのものだ。


二輪車の「もどき」では圧倒的な人気だった「スズキ」だが、四輪車ではほとんどお目に掛からない。写真の上が本物のエンブレム、下がやっと?見つけた「もどき」である。同じ「S」でも楷書と草書といったところだろうか。

マツダ」は次の2枚の写真のうち上が本物、下が「もどき」だ。似ているような、それほどでもないような・・・でも、最初にこの「もどき」を見た時、僕はてっきり「マツダ」だと思ってしまった。実はこれを製造している会社には以前、マツダが技術協力していたそうだ。

「スバル」のエンブレムは「大きな星」1個と「小さめの星」5個を組み合わせたものだが、「もどき」は「大きな星」2個で作られている。以前、街中で二度ほど見たのだが、最近は全くお目に掛かれない。桂林から北へ3000キロ、東北(旧満州)はハルビンの車で、こちらの販売店に行っても現物がない。「買うなら取り寄せる」と威張っている。仕方なくこの店の看板で代用した。写真左端の絵がそれである。なお、中国語の「汽車」は日本語では「自動車」のことだ。

ダイハツ」の「もどき」は「D」をふたつ重ねている。もっとも、この車、あるいはメーカーの名前は「大地」、つまり中国語の発音では「DADI」だから、それなりの言い分はあるのだろう。

「三菱」に対しては「五菱」。ここは小型の商用車などを製造しており、桂林市からそう遠くはない所に本拠がある。エンブレム自体はそれほど似ていないが、社名そのものを似せるのも、こちらのやり方みたいだ。例えば「長城汽車」という会社があるが、略称は「GWM」。英語名の「Great Wall Motor・・・」からは確かにそうなるのだが、かの「GM」の関連会社かとも思ってしまう。

なんで、中国ではこんなに「もどき」が多いのか。ある中国人が解説するには「中国では事業を始める場合、自分が弱いうちは強い者の陰に隠れる、名前なんかも拝借する、独自のものを打ち出すのは力がついてから、といった伝統があります。自動車の場合、今はまだ陰に隠れている段階です」とのこと。でも、真似ばかりして・・・中国人の尊厳ってものもあるでしょ? 恥ずかしくはありませんか? と突っ込むと、「真似られて光栄とは思わないのですか? 日本人は肝っ玉が小さい」と言い返され、つい「すみません」と、頭を下げてしまったことではあった。