わが家の「長持ち三羽烏」

検査データの改竄(かいざん)など、日本企業の不正が後を絶たない。「丈夫で長持ち」が「売り」だった日本製品はこれからどうなっていくのだろうか。そんなことを心配していたら、わが家で長持ちしている日本製品に思いが至った。

まずは、自転車(上の写真)。買ってから、もう50年、半世紀になるが、購入時の状況はよく覚えている。週末、記者仲間と徹夜マージャンをしたら、2万円あまり勝ってしまった。当時としては、かなりの金額である。確か、大学卒の初任給の平均が3万円くらいだった。

「さて、このカネを何に使おうか」。上機嫌で自宅近くまで戻ってきたら、自転車屋が目に入った。「そうそう、わが家にはまだ自転車がなかった。自転車を買おう」。そのころ、自転車の価格は結構高く、マージャンで稼いだカネをほとんど投入した。

ブリヂストン」製で、最近の自転車に比べると、見た感じがとにかくごつい。パイプも太い。メーカー名はすでに車体からすっかり剥げ落ちている。今、パンクの修理などでこれを自転車屋に持っていくと、「いやあ、頑丈そうですねえ」と感心される。スーパーの自転車置き場では、周りに何十台の自転車があろうと、これ1台が異彩を放っている。同じ自転車では、娘が中学か高校の時に乗っていたやつも、パイプは細いものの、今も健在である。かれこれ30年になる。

わが家の電気冷蔵庫も古い(上の写真)。40年前に買った時には「ナショナル」製だった。今の「パナソニック」である。最近の冷蔵庫に比べると、電気代は多分、高くついているだろう。それに、いつ壊れてもおかしくはない。できれば、そろそろ買い換えたいのだが、一応は元気に働いてくれているので、捨てるに捨てられない。

でも、ある日突然、壊れられては困る。冷蔵庫なしではやっていけない。そこで、いざという時にあわてないで済むように、家電量販店を時々回って、次にはどの冷蔵庫を買おうかと、目星をつけている。

家具などを除き、毎日使っているもので長持ちしているのは、以上の自転車と電気冷蔵庫だけかと思っていたら、もうひとつ、それももっと古いやつが出てきた。腕時計である。

きっかけは、このところ使っていた太陽電池の腕時計が突然、動かなくなったことだ。長い間、充電をさぼっていたせいである。そこで、充電する間だけ使う古い腕時計はないものかと、食器棚の引き出しを開けてみたら、下の写真のようなやつが現れた。

横文字で「セイコー スポーツマチック 5」とある。もう55年ほど前、学校を出て新聞社に就職した後に使いだした腕時計だ。何年間ぐらい使っていたかは覚えていない。自動巻きで、引き出しで見つけた当座は止まっていたが、ちょっと振ってみると、まさに機嫌よく動き始めた。

ネットで見たら、1963年の発売で、若者に大いに受けたそうだ。今でも中古品が5千円、6千円、いいものだと1万円、2万円もしているとか。当時も結構いい値段だったと記憶している。

自転車、電気冷蔵庫、腕時計。わが家の長持ち三羽烏は、僕との長生き競争になるのだろうか。