わが「酒」生活

わが「食」生活について前回書いたので、今回はわが「酒」生活です。

ただし、「酒」に入り浸っているわけではないのだけど、最近、「黒ビール」に凝っている。黒ビールが好きなのは昔からだが、普通のビールに比べて高いし、そんなに飲むわけではなかった。ところが、最近は黒ビールのいわゆるロング缶を毎日、南寧の住まいで欠かさずに飲んでいる。1缶、2缶・・・朝、近くのグラウンドでボールを蹴った後、シャワーを浴びて黒ビール――大げさではなく「至福の瞬間」である。

黒ビールをこんなに飲み出したのは、近くのスーパーに並んでいるのを偶然に見つけてからである。しかも、500ミリリットル入りのロング缶が5元(1元≒16円)。円安の最近とは言え、日本円でわずか80円ほど。もちろん、普通のビールよりはかなり高いが、日本ではとてもこの値段で黒ビールは飲めない。北京のビール会社の工場がわが広西チワン族自治区にも出来て、黒ビールが当地に出回り始めたらしい。「NAALE」という名前だ。日本の黒ビールと比べて品質はどうか、僕には分からないが、結構売れていて、時には品切れになったりする。この地にも黒ビールファンが少なくないようだ。

写真は某日のわが家の黒ビールの在庫である。「在庫調整」が必要なほど並んでいるが、普段はこんなには多くはない。スーパーで全商品10パーセント引きの安売りをやっていたり、僕の黒ビール好きを聞いた生徒が届けてくれたりして、一時的に在庫が膨らんでいるだけだ。もっとも、スーパーでの品切れに備えて「適正在庫」は普段から心掛けている。

余談だけど、同じスーパーで同じ銘柄の330ミリリットルの黒ビールが1缶4.5元もする。500ミリリットルのロング缶と0.5元しか違わない。だから、つい、ロング缶に手が出てしまう。ロング缶を売りつけるための値決めなのだろうか。ロング缶が棚からなくなっても、330ミリリットル缶が品切れになったことはまだない。

黒ビールと並んで凝り出したのが中国産の「赤ワイン」である。卸売の店で6本まとめて買うと、750ミリリットル入りが1本15元。日本のワイン通からは「1本200円かそこらの中国産!? 飲めるはずがない」と馬鹿にされそうだが、僕にはこれが結構いける。たまに、白酒(中国の焼酎)をまとめ買いに行く卸売店のおばさんから「安いけど、うまいよ」と薦められたのがきっかけである。

スーパーに並んでいるワインは、中国産の安いものは20元、30元からあるが、同じ中国産でも1本100元から150元、200元というのが主流を占めている。で、さっきの15元ワインとそうした100元ワインをわが塾の生徒に飲み比べさせてみたら、「15元の方がおいしいくらいです」と言う。以後、ワインはもっぱらこれにしている。

名前は「豊収 乾紅 葡萄酒」。「豊収」は日本語の「豊作」で、メーカー名は「北京豊収葡萄酒有限公司」。ワインのラベルにある「乾」はドライ、「紅」は「赤」。「豊作ワイン」とは、なんの変哲もない名前である。中国産のワインは「GREATWALL 長城」(つまり、万里の長城)とか「DYNASTY 王朝」とかいった大げさな名前をつけてスーパーに並んでいる。この地味な「豊作ワイン」はスーパーではまだ見掛けたことがない。

さっき、「白酒のまとめ買い」と言ったが、これはもう10年来やっている。買ってきた38度の白酒にクコを入れ、1か月か2か月、熟成?させる。味がマイルドになり、もっぱら水割りにして飲んでいる。いま、まとめ買いしている白酒は「桂林三花酒」と言い、2年余り前まで住んでいた桂林の酒だ。480ミリリットルの瓶を卸売店で1ダース買えば95元、1本7元余り。こいつは白酒の中でも安物で、そのままではとても飲めたものではないが、クコを入れると、それなりの味になる。

上の写真が熟成中のそれで、以前にもお見せしたことがある。瓶の上部と下部に固まっているのがクコ、日が経つと、クコは底に沈む奴が多くなってくる。また、真ん中で白く光って立っているのが朝鮮人参である。朝鮮人参は東北地方(旧満州)の吉林省出身の生徒が故郷に帰った折に土産に買ってきてくれた。高くて自分では買えないので、もっぱら到来物に頼っている。

かくして、わが「酒」生活は1缶5元(約80円)の黒ビール、1本15元(約250円)の赤ワイン、1本7元(約110円)余りでクコ、朝鮮人参入りの白酒――この3本柱で落ち着いている。何を食べたらいいのか?と悩む「食」生活に比べれば、まことに安定している。「アベノミクス」とやらの「3本の矢」より安定度はずっと上かも知れない。